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それに比べて、心優は切りっぱなしのおかっぱ頭で、さっぱりしたメイクをしているだけ。この面接のために、久しぶりに眉を整えたというほどに無頓着。男社会だから、誰も見ていないからと、女性の嗜みにはかなり無関心に過ごしてきた。
そんな田舎臭さがもろに出ていた。
その点から見ても、海軍のパイロット達を総まとめしている大隊本部の隊長様の秘書室なんて……『似つかわしくない、相応しくない、ムリ!』。
もう面接も終わった。あんなドタバタした面接、しかも……あの塚田氏の最後の不機嫌そうな顔。きっと採用されることはないだろう。
さあ、帰ろう。浜松の航空基地に帰ろう。
それから二週間後。浜松基地の上官から報される。
『おめでとう。横須賀基地、空部大隊本部、秘書室への辞令が出た。採用だよ』
え?
もうだめだと思っていたのに。あんな変な面接だったのに。つい本気になって、目上の男性に勝ってしまい恥をかかせたのに。
それが一年前、中佐殿との出会い。
心優はいま、城戸中佐秘書室の紅一点として、秘書官を務めている。
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