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彼女が元気よく返事をして、そして心優に勝ち誇った笑みを残して去っていく――。
でも心優は嫌ではない。どちらかというと『いいな~。可愛いから可愛く見えるんだもん』と羨ましくなる。
だけど彼女は心優を敵視している。こんな『ボサ子』に嫉妬してどうする。どうみたって、女性としてはそちらが勝っているし、中佐殿に近づくための大胆なこの手練手管……。心優など相手なんかじゃないはず。
「参ったな。どうした。今週に入って、この手の誘い三人目」
制服の胸ポケットから小さな手帳を出して、彼がメモをする。
彼はいつも女性からのお誘いが多い。でも漏れなく引き受けてしまう。それは目的があってのこと。
「三人もということは、どこかで大きな動きがあったのかもしれないですね」
心優の冷めた話し方に、城戸中佐が微笑む。その笑みは、あの微笑み! 心優の心臓がどきゅんと動くその笑みは『よくできました。いい子だね』といわんばかりのもので、とても優しい眼差し。
そんな中佐殿のお褒めの眼差しに、既に心優はドキドキ。そしてメロメロ……なんだと思う? でも誓っている。絶対にそんな甘えた顔を見せるものかと。
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