3.ドキドキです、中佐殿

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 ショートボブは、野暮ったくならないよう美容室でカットしてもらい、大人っぽくなるよう前髪を横分けにして、艶々の黒髪を保つ。メイクも基本のファンデだけじゃなくて、眉を整えて、ほんのり自然なチークも忘れずに、品の良いナチュラルな口紅を選んで、最後の難関はアイメイク。いかにも盛りましたみたいにならないよう、こちらもナチュラル志向。でも目元がぱっちり明るめになるように……。  秘書室にはたくさんの訪問客がある。『身だしなみ』は第一。美しくある、ではなくて、清潔感や第一印象の問題。ぎとぎとしているノーメイクのもっさい女がいても別になんとも思わないだろう……ではなくて、思う人もいるかも知れないというエチケットの問題だと思うようになった。  可愛い女性になりたいわけじゃない。ただ、ただ……。中佐殿の評判を落としたくないために。  ひたすら秘書室の先輩達に迷惑をかけまいと、必死だった。  朗らかで、いつもにこにこ明るく愛嬌があって、元パイロットという経歴で男性からも慕われている中佐殿。  ちょっぴり腹黒いしたたかさも持ち合わせていて、なにごともそつなくこなしてしまう。みるからにやり手だった。
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