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塚田少佐には『冷静沈着』という言葉が本当に似合う。にこりとも笑わない。だからって本当に恐ろしい訳ではない。言葉の端々に温かみや思いやりをかんじる。
逆に、城戸中佐は見た目はにこにことっつきやすそうに見せて、内側に秘めている冷徹さは徹底されている。
しかし、そんな中佐殿が変貌してしまう人が、ただひとり。
心優はその人が来ると、城戸中佐同様、落ち着かなくなってしまう。
あの朗らかな中佐の様子が明らかにおかしいから……。
―◆・◆・◆・◆・◆―
その方の訪問は、城戸中佐の心を揺らすだけではない。
長沼准将の秘書室の空気をひっくり返す。
「ミセス准将が隊長室にお見えだ。すぐにお茶を差し上げてくれ」
「かしこまりました、中佐」
塚田少佐がすぐにデスクから立った。
だけれど中佐殿のその一声を耳にした秘書官男性達がざわついた。彼等の視線が一斉に、城戸中佐へと向かう。
「中佐、まさか。いま隣の隊長室にミセス准将が?」
「ああ。毎度の如く、お友達に会いに来たといわんばかりにアポなし」
呆れた中佐に同調するように、彼等も疲れたため息をこぼした。
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