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『ミセス准将』と聞くと、ここにいる男達は揃って落ち着きをなくす。
『ミセス』が遠い離島部隊である小笠原基地から横須賀に基地にやってくると、あまり良いことがない。
心優達の大ボス、長沼准将を巻き込んで、彼女はなにを言い出すかわからない。『ミセス台風』とも言われているぐらい。
ここの男性先輩達だけでなく中佐殿さえ、あからさまに嫌な顔をしてしまうほどの彼女は『海軍パイロットの女王』だった。
「またうちの大ボスが荒れなければいいけれどな。真っ向勝負するといつもミセスに負けている」
「いやいや、あれでけっこう互角。ミセスだって勝った顔をしているだけで、小笠原基地に帰る時にはきっと腸煮えくりかえっているんだろ」
「あのアイスドールと将軍達に言われているミセスが? 腸煮えくりかえる? そんなことあるのかね」
彼女がやってくると、普段無口な男達が急にお喋りになるのも特徴だった。
「園田、手伝ってくれ」
「はい」
眼鏡の塚田少佐に言われ、心優もすぐさま立ち上がる。
塚田少佐は、新人秘書官である心優の『教育係』を任され、彼と一緒に作業をすることが多い。
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