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むしろその冷たい顔をしている彼の方が『中佐殿のイメージ』だったのに。しかし彼の肩にある肩章は『少佐殿』。中佐殿はにっこりにこにこ、黙って補佐に任せた面接を眺めているだけ。
「お兄様もそれぞれ武道に携わっておりますね。格闘一家というところでしょうか。園田さんは、おいくつぐらいから空手をされるようになられたのですか」
眼鏡の男性の問いに、心優も淡々と答える。
「覚えておりません。もの心つくまえにはもう、」
その時だった。にこにこしている中佐殿が唐突に言葉を挟んだ。
「いいカラダしているねー」
は? そう言いそうになって、心優はなんとか口を閉じ飲み込んだ。礼儀にうるさい軍隊で、無礼な反応はあってはならないから。
だけれど、心優だけではなかった。中佐の脇にいる補佐官の男性達も同じく『は?』と目を点にして上官の彼を見ている。
「ちょっと立ってみて」
中佐殿からのやっとのお言葉だったから、心優も咄嗟に立ち上がっていた。
「くるっとひとまわり」
今度は戸惑った。すると眼鏡の補佐官が冷めた眼差しで、中佐殿に言う。
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