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今度はあちらが目を丸くして静止している。そして眼鏡の塚田少佐と顔を見合わせている。
「戦闘機では7G、時には8Gでさえも当たり前だったことでしょう。私もひと目でわかります。怪我をするまでは父や兄を追って武道一筋でした。いまでも私の身体に染みついております。唯一、胸を張れることです。そんな私のそれまでのことに気がついてくださって、有り難うございます」
選手だったころに比べれば、いまはもうそのカラダではない。でも日々の鍛練はなるべく怠らないように……。違う、それをすることでしか自信がもてないから。
「ありがとう。こちらもうっかり申し訳ない。なにせ男所帯で、女性慣れしていないのでね」
「あの、」
こちらから質問をして良いのか躊躇っていると、にっこりと城戸中佐が『どうぞ』と柔和に促してくれる。
「あの、空部の本部事務所に女性事務官はいらっしゃらないのですか」
「いるよ、本部室の事務官ならね。でも秘書室は別。少数精鋭のチームワークで准将殿をお守りしなくてはならない」
「そのような大変な部署に、わざわざ女性をお求めなのですか」
「うーん。なんて言えばいいのかな。うーん」
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