1.セクハラですよ、中佐殿

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 心優も日本一が目の前だった。だけれど、大学生になって怪我をした……。そこで競技の第一線でやっていけなくなったことを悟り、この軍隊へと切り替えた。  女子訓練校に入校し、鍛えた身体を武器にして、この軍隊で事務官として生きていくことにした。  淡々と事務官として過ごしているうちに、いま、横須賀基地の空部隊大隊本部の秘書官に呼ばれて面接に。  どうして私なのだろう。心優はまだ不思議で不思議でしようがない。もう退いた武道しか取り柄がないから。 「あ、せっかくだから。塚田と組んでみてもらおうかな」 『組む』のひとことで、心優は硬直する。 「ここで、でございますか」 「うん。自慢の腕前を見てみたいな。だって、もう二度と会えないかもしれないでしょう」  ムリ――と自分で落としておきながら、にっこり中佐が当たり前のように『もう会えない』と口にしたことに、胸がズキリと痛んだ。 「しかし。彼女は本日は道場着ではなく、女性の制服ですし」  塚田少佐も心優の姿をひと眺め。本日は面接のため、心優はいつもの肩章付きのジャケットに、タイトスカートを着用していた。
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