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そうして、また、飛遊我の胸のなかで収まる。――言いようのない幸せが、からだじゅうに広がっていく。……幸せ。
「もう、……離さない。伊吹……」飛遊我が、あたしを抱きしめる力を強くする。「ちゃんと、世界で認められる男になって、帰ってきたら、絶対にプロポーズするって決めてたんだ。待たせてごめん。もう、……離さないから」
――やっぱりそういうところが、飛遊我らしいなあ。
「……笑った?」
「ううん。『らしい』なあと思って……」
「それを言うなら伊吹のほうもだよ。……なんでいきなしプレイヤーになってんの」
「続きは、……そうだな。戻って後片付けとかしてからだね」
「分かった。……待ってる」
「飛遊我のこと覚えている団員さんもいるよ」とあたしは笑った。「ちょっと、挨拶して来たら?」
「ああそうだ。伊吹」と改まった顔で飛遊我が、「今度、うちの楽団で演奏しなよ。伊吹なら、大歓迎だ」
突然の提案に、驚いた。「……リップサービス、じゃなくって?」
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