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所変わって、今はC棟3階の廊下にいる。
あの後は、B棟1階まで確認して、C棟に移動。屋上をゴール地点として、見回りをしてきた。屋上へ続く階段は校舎北側にのみある。道中、漣に確認したのだが、やはり何件か制裁などの動きがあったようだ。
それらに関しては、特に誰かからの指示という訳ではなかったようで、風紀委員に連絡して終わったそう。先程のは、俺に敵意ある人物と深海が関わったから漣が直接動いたのだろう。
俺が東雲委員長に連絡を入れなければ、風紀に引き渡す前に、尋問でもして一応の証拠として報告を上げる予定だったと思われる。
そういう計画を全部すっ飛ばして、俺が来ちゃった、というのが顛末だろう。
これはあまり怒る訳にもいかないな。計画は確かに合理的であって、上に立つ者としての判断基準には沿っていた。…ただ、俺の理念と一致しなかっただけで。
だって、まだ学生なのだ。そういう犠牲を考えるのは、もっと大人になってからでもいい。
全部守りたい。
1人の犠牲も出したくない。
夢物語かもしれない考えを持って何が悪い、と常々思うのだ。
それに、俺はそれを夢物語や理想のまま終わらせる気は無い。頼達がいる限り、俺は自分の持ちうる力を疑わないし、叶えられるだけの能力があると自負しているのだから。
俺が自分を疑うということは、頼達が向けてくれる信頼を裏切ること。そんなこと、俺は死んでもゴメンだ。
今、能天気に屋上へ続く階段を登っている漣は、今回の計画について後悔したり反省したりはしない。それが最善だとあらゆる可能性を考慮した上で実行にうつしたのだろうから。
普段はいじられ役でも、人の心に関しては、本当によく分かっている。俺が半ば本気で、ひなとの婚約を無くそうとしていても、実行に移すことは無いこともきっと知ってる。
「ユキちゃーん?考え事?だいじょうぶ〜?」
おっと、漣がいたから大分ぼんやりしていたらしい。まあ折角の息抜きだし。
心配してくれる漣に大丈夫と、首を振りながら、屋上への扉を押し開けた。
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