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「ただいまかえりまし……あ”…」
礼が白戸の家に帰る様になって3日目。
リビングに足を踏み入れた礼がちょっとだけ眉を顰める。
それを見て白戸は内心「ひぇっ」と思いながらも、満面の笑みで迎え撃った。
「おかえりっ。お疲れ様!今日はガパオライスとラッシーと付け合わせにレタスと人参とピクルスのサラダでぇっす!」
超絶ハイテンションな白戸をさて置き、礼は部屋に視線を向けた。
チリ一つなく掃除され整頓されている…。
「尚弥さん?」
「わーっ!ゴメンってば‼︎暇で仕方ないんだよぅ」
怒られると察してか、白戸が先回りに喚いた。
「尚弥さんはカツオか何かなんですか?動いてないと生きていけないんです?」
白戸は脅威の回復力をみせ実質昨日から動いている。
そして昨日は礼にくどくど怒られた。
近づく礼に白戸は身を竦める。
が、落ちると思っていた叱責はついぞ落ちることなく、フワッと優しい抱擁に包まれた。
頭上に深く重い溜息は落とされたが。
「…無茶はしてないんですよね?だったらいいです。」
「え⁉︎…いいの?」
ダメ出しに恐る恐る問えば、礼は僅かに体を離し、ちゃんと目を見て首肯した。
「言っておきますが、別に見限ったとかじゃないですからね?ただ尚弥さんが楽な状態なのが望ましいので。動いてる方が気が紛れるならそれでいいです。」
昨日は流石に…。
たった1日で回復して家事を遂行しているとは思わず、心配で説教してしまったが。
うるっと目を潤ませた白戸がガバッと礼に抱きつく。
「れー君大好き!」
「いや俺の方こそ…!」
そこで言葉を途切った礼は強張った顔で呟いた。
「…………スミマセン本当。負担かけっぱなしな気がする…。」
食事に洗濯、掃除etc…
思えば生活全般白戸に任せっぱなし。
過労上がりなのに。
俺は関白気取りの亭主か、はたまた子供かなのか⁉︎
途端に気落ちする生真面目な恋人を今度は白戸が慌てて宥めにかかる。
「いや言うてボク今が暇なだけで。仕事にかかりっきりになったら全然出来ないから。」
ほらほらご飯食べよー?と食事に促す。
相変わらず白戸の料理は見た目も含めて店レベルに本格的である。
礼は感心と尊敬の念を込めて味わいながら、何気を装って白戸に尋ねてみた。
「今…と言ってもまだ3日目ですけど、尚弥さんはこの生活に何か不満はありますか?」
「…動きたい…」
「…本当に回遊魚なんです?」
礼は流石に呆れてツッこんだ。
そー言うことを聞きたかった訳じゃないんだが?
例えば一緒にいるとやっぱり気疲れするとか、休まらないだとか。
その辺りを聞きたかったのだ。
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