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俺はスパダリなんて言われたくなかった。
いや別に人に親切にするのも、自分に出来る事を真面目にやり通すのも嫌いなわけじゃないし。
それに対しての称号だと思えば、嫌だと言う訳でもないけれど。
でも俺は格好良いと言われるよりできたら可愛いと称賛されるような男子になりたかったんだ。
「どたんばで『君が受けってなんかやっぱちょっとちがうよねー』とか。なんなんれすかって!そーいうやりとりの上で会っておいて…」
大学時代に意を決して出会い系で男をひっかけてみて、いざ会ってホテルへ行って言われたセリフだ。
その時の男性は顎髭なんか生やしていて少し軽薄な遊び人風情ではあったけども背も高くそこそこガタイもしっかりした社会人のお兄さんだった。
俺と比べて格段に女々しいというわけでもなかったのに。
その人の受けのイメージに俺はそぐわなかったようだ。
ネットがダメならと発展場と言われる店にチャレンジしてみたものの声を掛けてくれたのは受けの人ばかりだった。
世の中の俺に対する査定はスパダリであり、攻めなのだ。
「おれらって最初からこうじゃなかったんれすよ。背らって低くて痩せてたし…」
自分でいうのもなんだけど中学ぐらいまでは華奢な美少年枠だった。
初体験は高校受験の為に雇った大学生の家庭教師だ。
自分がゲイだとかノーマルだとか。恋愛観ですらまだ夢見心地だったけど、快楽には興味津々なお年頃だったのだ。
教えられるままに後の気持ちよさを知って溺れた。
ただそれだけで別にその人が好きだったわけでもなく。相手としてもただ手頃に性欲を解消できる玩具が欲しかっただけだろう。
受験合格を期にその人とはそれっきりだし、別に悲しいわけもなかった。
が、高校生になって色々考えさせられた。
まずその頃から急速に成長して、女子にモテ始めた。
告白されて浮かれて付き合ってみたりもした。
女の子は可愛いと思ったし、人として相手を好ましく思っていたのは真実だ。
エッチもした。
…けれど、いつもやっぱり物足りなかった。
流石に後ろを攻めて欲しいなんて初々しい彼女に初々しい高校男子が頼めるはずもない。
それでひょっとして自分はゲイなのだろうか。と悩み。
女子とも付き合えたわけだからバイというべきかもしれないけども。
ともかくゲイだと自覚した方が上手く行くんじゃないだろうかという結論には至ったものの、初心な高校男子がカミングアウトして男を漁るのは勇気がいる事だ。
結局誰にも打ち明けられず、彼氏の一人も作れずもんもんと高校時代をやり過ごした。
いざ!とばかりに大学生になった途端広がった世界で男を作ろうと頑張ってみたけれど。
先の通り。
ゲイに出会す事はできたものの『受けっぽくない』『スパダリ攻めの方が似合う』といわれ続け現在に至る。
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