彼ぴバカです

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白戸はその元気な声の主を振り返る。 黒い学ランは近隣中学のもの。 そのカッチリした制服が重そうにさえ見える華奢な身体つきのまだあどけない少年。 整った顔立ちは綺麗とも可愛いともとれる中性的なもの。 駆け寄る少年に足立が呆れた顔をする。 「君も毎日ご苦労だな。」 少年は白戸が門に立つ時は必ず駆け寄って挨拶をしていくのだ。 随分懐かれている。 きっかけが何だったか覚えてないが、少年が困っていた時にちょっと助けてやったとかそんなところだったはず。 少年はチラッと足立を見たがスルーし、白戸に身を乗り出した。 「今日は放課後生徒会ない日ですよね!俺迎えにきますから一緒に帰りましょ?」 「君んトコもうテストでしょ?帰って勉強しないと。」 笑顔と気遣いの言葉でやんわり拒否され少年はうっと怯んだが、立て直す。 「じゃ、じゃあ勉強教えてください!」 「君、教えなんて必要ないくらい賢いでしょ?」 「そ、そんな事ないですっ。言っても受験生だし!成績重要なんですっ。」 少年は祈るように組んだ手にぎゅっと力を入れる。 「成績悪いと家庭教師雇うって…。そうなったら放課後会いに来る時間が…」 「いやだから帰って勉強しろって」と隣で足立が呆れたように突っ込むが。 家庭教師… なぜかその単語が白戸を不快にさせた。 この少年に家庭教師を近づけたくないな。 「いいよ。暇な時でよければボクが勉強みてあげる。」 飛び跳ねて喜ぶ少年とは別に足立は渋い顔をする。 「オマエなんでもかんでも安請け合いすんなよ。ただでさえ忙しいのに。」 「その大半は君の恋人のせいなんだけどな?」 「んん“…」 そうかもだけど、俺のせいではない、と足立は言葉を濁す。 白戸はそんな足立に溜息をついた後、少年に顔を戻した。 「ほら、そろそろ学校行きな。遅刻しちゃうよ。」 少年が頬を染めてキラッキラに輝いた目で白戸を見上げる。 「じゃ、放課後迎えにきますね!」 白戸は「はいはい」と少年の頭を撫でた。 嬉しそうに身を翻し学校へ向かう少年。 「オマエホント懐かれてんなー。」 遠ざかる後ろ姿を眺めて足立が他人事のように言った言葉に 「そうだねぇ」 白戸も他人事のように答えた。 放課後、近くの公園の東屋で少年と額を突き合わせて勉強会。 やはり教えるまでもない程度に少年は頭がいい。 それで白戸は白戸で自分の教科書を開いて勉強している。 それでも時折少年声をかけられ、わからないところを教える。 個別授業というより単なる勉強会だ。 なんて楽なんだろう。 普段子供以上に手が掛かる会長といる為か、手のかからない少年が天使に見える。 まぁ、実際に可愛いんだけどね。 見た目もさることながら性格もいい。 好意を向けられてるのはわかってる。 懐かれて悪い気はしない。 だけどねぇ…。
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