72人が本棚に入れています
本棚に追加
白戸は狼狽える少年を宥めるべくイヤイヤ待て待てと手を翳す。
「ボク、結構なんでも出来て格好いい子が好きかも。その上で可愛けりゃ最強だよね。」
何故かハッキリと描き出される好みのタイプ。
未だ出会ってもいないのに絶対会えると確信はある。
「うーんとね…、自分より格下は論外?せめて対等か格上?ーーーを組み敷くから気分いいんじゃない。」
すんごい相手を満足させるなんて自尊心満たされる。
というわけでお子ちゃまは保護対象であって恋愛対象にはなりえない。
そんな相手を口八丁で手篭めにしたとて誇れる物は何もない。
寧ろ、自分の格を下げる行為としか思えない。
ポカンと目口を開け放って固まっている少年に白戸は苦笑して、改めてその頭を撫でる。
「もっと沢山、色んな経験して成長して?なんでもできる格好いい子になって。みんなに愛されて、大好きな物や人一杯作って。その中で一番好きって思ってくれたら嬉しいな。」
無論、そんな相手に見限られない様ボクも努力を怠る気はないよ?
とは伝えないけども。
ゆらりと自分を取り巻く空気が揺らぐ気配がした。
あ。夢が覚める。と、脳裏で漠然と思う。
「そんな“大人の君“がボクの理想のドンピシャなんだって」
…言ってなかったっけ…?
ああ、言い忘れてたなコレ。
何処とも判別できない空間でプチ反省。
夢の真っ只中には分からなかったが、今なら苦もなく分かる。
この少年…れー君だったのか。
白戸はパチッと目を開けた。
薄らと白みかかった室内で朝が近いと知る。けれど起きるにはまだ早い時刻だろう。
眼前には寝顔さえも見惚れてしまうほど格好可愛い礼が健やかな寝息を立てている。
もー!
チューして無理矢理起こしてしまいたいくらい可愛いのはギルティ。
まぁ我慢しますけど。
と、
何もしてないのに、礼の瞼がカッと持ち上がった。
「聞いてないです!てか、これから俺はどこに舵切ればいいんですか。でも嬉しいです。」
捲し立て、尚弥さん大好き。という言葉と共に唇が塞がれた。
噛み付く様な触れるだけのキス。
ーーーで、満足したのか礼はもそもそと白戸の懐に潜り込んで再び寝息を立て始めた。
……盛大な寝言?
驚いて1ミリも動けないまま白戸は思う。
まっさか同じ夢みてたりなんて、…ないよな?
随分タイムリーにヒットした寝言で驚くが、そんな非現実なと一蹴した。
ちなみに後日尋ねたが、本人は寝言も含め夢もさっぱり覚えておらず真偽は闇に葬られた。
最初のコメントを投稿しよう!