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とはいえまだ3日。
これまでも週末一緒にいる事はあったので質問の真偽を見極めるには早いけども。
白戸は素知らぬ顔でそんな礼の顔色を伺いながらパクッとガパオライスを口に頬張る。
分かってるよー?
そしてご愁傷様。
礼ではまだまだ敵わない。
でも仕方ないんだ。
可愛くて格好良くて大好きで、大切にしたいとは思っている。反面、だからこそ好きにしたいじゃない。
「今の生活に不満、…あるよ?」
白戸の返答に「えっ」と声を上げた礼は真摯な面持ちで身を乗り出した。
「なんです?俺でなんとか出来ることでしたら努力しますけど!」
おお。なんて失言!
白戸は笑いが堪えられずによっと笑った。
「“お預け“キッつい。」
一瞬呆けた礼は次いで赤くなりどわっと汗を吹き出した。
そろそろと乗り出していた上半身を戻す。以上に仰け反った。
白戸は恋人の想像通りの可愛い反応に気を良くして追撃する。
「3日も一緒にいるのに。ちょっとイチャイチャしようとしたのも怒られたし、すごくカナシイ。はぁ、キビシ。」
「それはっ…、だっ、アレはっ…!」
既に昨日ほぼ回復をしてみせた白戸に迫られたが、心配性な礼がピシャピシャと跳ね返した。
その報復とばかりに今日の朝。
出勤する礼の見送りに玄関に来た白戸はネクタイを直し襟を糺しと甲斐甲斐しく世話を焼くふりで礼を油断させキスをした。
いや、あれは強奪したと言っていい。
礼が反射的に逃げようとするのをドアに押し付け腰が砕ける一歩手前まで貪った。
溜飲を下げた頃合いに「あ。もうこんな時間。」とシレッと解放した。
いっそ。
出勤直前に持て余す熱に翻弄され涙目でパクパク口を開くだけで何も言えず「一日大人しくしててくださいね‼︎」という捨て台詞だけ残して出ていった礼は大人だったと思う。
「あれはちょっと失敗だったと思ってる。あんなエロ可愛い顔で電車に乗ってチカンに会わなかった?」
「ご心配はいりません!そんな顔してませんし、俺みたいなのを襲う物好きはそういませんから!」
礼は羞恥でそう吠えるが。
全く…自覚薄いんだからもー。
自己評価の低い恋人に白戸は内心で溜息を吐いた。
「んー後はねー。」
「まだ何かあるんです?」
身構える礼を白戸はふふっと笑って言った。
「引越したーい」
「…え?引越し、ですか?」
礼が不思議そうに目を瞬かせ鸚鵡返しする。
そんな事を考えているなんて初めて聞いたもので。
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