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「ごめん。昨日は……急に泊まり込みで仕事が入ったんだ」
やっと、拓海が俺を見る。その目は俺の感情を探ろうとしていた。怒っているんじゃないのかと、怯えているのだろう。そんな風に見れば、拓海は二十五歳になっても、相変わらず可愛いとさえ思えた。
「誕生日なのに、災難だったね。お疲れ様」
俺の言葉に緊張の糸が解けたのか、あからさまに拓海の肩が下がる。
「せっかく用意してくれてたのにごめん。もったいないことさせた」
拓海の視線がゴミ箱に注がれる。俺は「気にしなくて良いよ」と視界を遮るように蓋をした。
「それよりも、プレゼントがあるんだ」
妙な高揚感に酔いそうになりながら、俺はリビングの椅子に置いていた紙袋を手に取る。
立ち尽くしている拓海に、紙袋から取り出した掌サイズの箱を手渡す。
「最近、少しマンネリ気味だったよね。俺も悪かったなって、思っているんだよ」
「ありがとう」
気恥ずかしそうに笑んだ拓海は、「開けても良い?」と問う。
俺がどうぞ、と促すと、拓海が青い包装紙を外す。中から黒い箱が現れ、拓海の指が蓋を持ち上げる。拓海の一挙手一投足見逃すまいとして、俺はその様子を見つめた。
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