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一日経ったケーキの見た目は、何も変わってはいなかった。
それでもお腹を壊したらいけないと、俺はためらうことなくケーキ片手にキッチンへと向かう。ゴミ箱に三号のホールケーキを捨てたところで、玄関の扉が開く音がした。
「おかえりなさい」
俺は笑顔を貼り付け、玄関の方へと視線を向ける。
あからさまにばつが悪そうな拓海が、視線を落としながら靴を脱いでいた。
「遅かったね。もっと早く帰ってくるかと思ってた」
テーブルに置かれているラップのかかったチキンやスパゲティ。それもキッチンに運んでいく。
「遅くなるって、言ったはずだけど」
ぼそりと言った拓海に、「知ってるよ」と返す。
「でも、昨日誕生日だったから今日こそは、ちゃんとお祝いしてあげたかったんだ。ごめんね」
ボトボトと、白いホイップクリームの上に赤いミートソースが被さる。その上からさらに、堅くなったチキンがボトンと音を立てて落下した。
「お腹すいてない? 何か作るけど」
「大丈夫。食ってきたから」
「そっか……それなら良かった」
俺は残念に思うも、仕方ないと口角を上げる。それに対して拓海は、こちらを見ようともしない。
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