二つの証明

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 読み終えたであろう拓海の第一声は「なんだよ、これ」だった。  想像とは裏腹の反応に、俺は少しだけ戸惑う。 「何って……日記だよ。五年前からつけてる。本当は拓海に見せるつもりはなかったんだけど――」 「そうじゃない! 俺のこと、ずっとつけてたのかよ」  喜んでいるわけでもなく、明らかに動揺して怯える拓海。予想外ではあったが、俺は拓海を宥めるように「大丈夫だよ」と告げる。 「あの女のことなら、別に怒ってないよ。どうせ、女が無理強いしたんでしょ? だけど、俺の気持ちが分かったよね? だからもう、あの女の所に行く必要はないから」  俺は青ざめ立ち尽くしている拓海を優しく抱きしめる。  そう簡単には、断ち切れない関係なのだろう。だから、拓海はすぐには首を縦に振れないのかもしれない。 「何なら、もう二度と拓海に近づけないようにしてあげるから」  女さえ消えれば、拓海は自由になれる。俺は懇切丁寧に、拓海の耳元で諭した。  拓海は俺の腕の中で、何やらもがき、喚き出す。  きっと、俺のことを心配して、批難めいたことを口にしているのだろう。  だけど、これは手帳に続く、もう一つの証明にもなる。  二つの愛の証明を前にして、拓海はただ戸惑っているだけなのだろう。  そんな拓海を愛おしく思いつつ、俺はいつまでも宥め続けたのだった。
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