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いつか親子に
ジリリリリ…ガチャッ
「ふぁーあ…眠っ」
目覚ましで目を覚ました俺はベッド脇に貼ってある写真に目をやる。
「サティ…」
大好きだった友達。料理が上手くて…小学校の家庭科の時、一緒の班になった時に胃袋を掴まれた大好きな大好きな友達。
「…あと10分寝よ」
端末のタイマーをかけて再び寝ようとするとトストストス…と足音が聞こえてきた。
「こりゃ、起きんかいナタ!」
(うわぁ…二度寝したかったのに!)
布団を頭まで被ってたぬき寝入りしようとしたけどバサッと布団を剥ぎ取られた。
「寒っ!」
「何が、寒っ!じゃ!
さ、朝ご飯出来てるからはよ起きて来い」
先生は…このやたらと素早いナマケモノの亜人のナタリーは俺の親代わり。
本当の親は…俺を雪の降る日に裸で捨てたクソみたいな奴だ。
「分かったよ、分かったから!
あと10分…」
「じゃあワシが添い寝して数えてやろう。
ほれ…600、599、598…」
「やめろって!起きるって!」
仕方なく起き上がり、ナタリーを引き剥がす。
伸びをして、寒いのを我慢しながらパジャマから厚手の服に着替える。
「まったく…女子の前で堂々と着替えるでないわ」
「は?女子?誰が?」
「ワシじゃ」
「490歳のばーさんが女子とか冗談キツイって」
一見子供のように見えるがナタリーは490歳。俺の20倍は生きている。
「誰がババアじゃ!
ったく。ほれ、さっさと行くぞ」
ピョンと俺の背中に飛び乗って来たナタリーをおんぶして俺はリビングに向かう。
「今日はカレー?」
「うむ。昨日の残りじゃ。
今日も調査に行くでな。力付けなきゃ」
まぁ、若いから朝ご飯カレーでも胃もたれしないけど。
さっさと朝ご飯のカレーを食べると俺は朝の支度をし、さっそく今日の調査対象の星に向かった。
調査対象の星に着くと断層を探す。
現地の住民に聴いたりして見つけた断層からメガリス結晶を採掘する。
「先生、これはどう?」
ナタリーに結晶を渡すとナタリーはそれを耳にあてる。
「……」
「声、するか?」
「…駄目じゃ。
これは量産種のものじゃな」
ナタリーはメガリス結晶に封じられた念を聴くことが出来るらしい。
メガリス結晶とは…2000年前に神人類が作った宇宙制圧兵器が砕け散ったもの。材料は…人を生きたままミキサーにかけたもの。
そのメガリス結晶の中でも俺達は古代獣人や古代神人類が材料になった物を探している。
「この星はハズレかなぁ」
「無駄足じゃったが、よい。
この星にはよい温泉宿がある。寄っていくぞ」
「ハイハイ…」
まぁ、温泉宿…
いいんだけど。
「ほれ、ナタ。一緒に入るぞ」
部屋に温泉がついたいい部屋に泊まる事になったが…やっぱりか。
「しゃーねーな」
俺は服を脱ぐと素っ裸のナタリーを抱き上げて一緒に温泉に入る。
「ちびっこなのに温泉好きとか無謀だろ」
子供のように小さなナタリー。これでも大昔に成人してるし、子供もいたんだとか。
「好きなものはしょうがないじゃろ。
あーぁ。ナタも早う結婚して子供を見せてくれればよいのに」
「…いつかな」
…サティはまだ独り身だろうか?
中学を卒業して以来会ってない。
キリオやガーラに取られてないか心配だ…。
「よし、上がるか。あんまり長湯しておるとふやけるでのぅ」
温泉から上がって少しすると豪華な料理が沢山運ばれてきた。
それをたらふく食べ、宿の人が片付け終わると布団が敷かれたからさっそく横になる。
「あー…布団最高だ」
「ナタよ、ちょっと頭を上げい」
「ん…」
言われた通りに頭を少し上げるとナタリーは膝枕をしてくれた。
「耳掃除をしてやろう。お前は自分でせんからのぅ」
「めんどくせーから」
「まったく…ワシがおらんくなったら嫁にしてもらうんじゃよ」
ナタリーの小さな膝の上で、ナタリーの匂いを吸い込みながら俺はされるがまま耳掃除をされていた。
ナタリーがいなくなるなんて…ずっと先だろう。
「ほれ、反対を向け」
「うん」
気持ちよくて…なんだか眠くなってきた。
「眠いのか?ナタ」
「う…ん…」
「そうか。このまま寝てよいからのぅ」
「うん…」
ナタリーが布団をかけてくれて、頭を撫でてくれる。
当たり前だけど幸せ…
「先生…」
「なんじゃ?」
「…なんでもない」
…いつか、恥ずかしがらずに「お母さん」と呼べたらな…いいな…
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