追記:抜粋

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追記:抜粋

 ランサの花は今が旬で、見渡す限りに淡い桃色が(あふ)れていた。  あれほど酷い事が起きた場所であるはずなのに、まるで楽園のように見えた。  それは、ただ孤独にその中に立っていた。  奇妙に()じれていたが、それでいてある美しさがあった。  風が吹き、ランサの花が一斉にそよぐと、それはこちらを見た。  ああ、と私はため息をついた。  ようやく面と向かえた。  かつて、その花の名前と同じ少女の名前を、それはどんな思いで、あの時口にしたのか。  再び風が吹くと、揺れるランサの花の陰に隠れ  それは永遠に私の前から姿を消した。
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