第2章【暗雲】

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教室に入ると、そこにはやはり心の奥で悲観していた光景であった。みんな綺麗にグループ作ってあるような雰囲気だった。 僕はまるで転校生だ。 白基調の教室だからか外の景色には目を奪われる。高校のように席が決まっていたら楽だったがそうもいかない。仕方なく奥の窓辺に座った。 滑車の付いたオレンジ色のその椅子は座り心地よく設計されているけれどとても硬かった。机も狭くパソコン一つが限界だ。 誰も私を知らないのは当然だが、知られるせいで避けられるのも嫌。 この時ばかりは人知れずいつの間にか風に飛ばされる木の葉が羨ましい。 一人一人を観察できるほど僕に心の余裕はない。ただわかるのは、僕は相変わらず情で仮のグループに入れてもらうしかないということだ。 授業が始まると流れるような自己紹介が始まった。人そのものには興味はあるが、僕は昔から流行りには無頓着、自分の興味ある話しかできない程つまらない人間だ。例え新しいの何かを教えられても、それこそアニメやドラマで、それをいつでも見れるし、見ればどうせハマるのに、なぜか「見たら負けみたいなものだから今度でいい」と、変なプライドが勝っていつも後回しにしてしまうそんな癖がある。 それが付き合いづらいと思われるのかもしれない。 だからこそ君が何故僕に深い付き合いをしてくれるのか嬉しいと同時に不思議でならない。今頃も僕のこんな文をここまで読んでくれているのだろうか。 そういえばこの学校はやたらとグループ活動させるのが好きなようで、将来の仕事で必要だからとの理由でよく他人と話すよう強いられる。もちろん将来の金のためならこれは必要不可欠だろう。 ただ君もわかっているように… 僕は誰かと関わる度に孤独を心に刻むことになることを。 あえて言っておくと僕がこの学校で仲良くできたのも指で数えられるぐらいだった。事実いうと孤独ではない。 でも最悪なのは孤独が現れた瞬間に人と居ることに飢え、満たされれば満足して孤独(ひとりのじかん)を欲しがる、そして気づけばまた孤独に不安を苛まれているのだ。得たものを守ろうとする他人を愛する意志と、厭きれば勝手な理由でそれを捨て去る自己中心な意思が交互に混ざる。 そう、僕は実に矛盾からできた出来の悪い人間である。 それが人に好かれないのかもしれない。 我に返った時、前に座っていた深緑色のジャンパーを着た男が話かけてきた。 「君がレイさん?俺らのグループに入る?」 黒髪が白い蛍光灯に照らされて毛先が茶色く光っていた。マスクが目立って前髪の下の目が小さく感じるが、その瞳孔は大きく見開き、真っすぐこちらを見つめていた。自分の反射がその目から見えるほどに… そうか、なんか始まってるのか。自分の自己紹介をしたのを最後に何も聞こえていなかった。 「いいの?ありがとう」 その時の僕はかなりぎこちなかった。頭の中が負の霧に覆われ思考がもはや止まっていた。 気が気ではなかった。一日中ぼんやりとしていて、英語の先生がやろうと言っていた課題も、コンビニがよく並んでいて後ろの圧に負けて加熱できないまま冷たいホットドックを口に運びざるを得なかったのも、同じような系統の服を着た茶髪の女子三人組から言われた陰口も(そうと気づいている時点でもはやそれもう陰口とも呼べないが)、気にならなかった。 正直初日の経験はよく覚えていない。なぜなら毎日が初日を繰り返しているから。僕もいつの間にか上辺だけの笑顔を覚えてしまっていた。 とにかく何かを望んだ僅かな期待は怒涛に崩れ去った。 初日の授業を終え、帰りのバスに乗ったことはよく覚えている。いつも同じ景色、同じ感情で乗っていたからだ。
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