201216 霜/戦/綱

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ

201216 霜/戦/綱

兵士が2人、向かい合っている。片手にはサーベルを持ち、目はギラギラと殺気立つ。頰は紅潮し、息は荒い。浅く吐かれた息は白く煙だち空に消えていく。 兵士2人の後ろには一列に大勢の兵士がひしめき合い、一様に殺気立っている。 誰かが一歩を踏み出したのか、足元からギィと音がする。不安定な足場である。左右には壁も何もない。もちろん地面もない。そこも見えないが、兵士たちはその恐怖は感じていないようである。 相手への殺意のみが今、ここに存在している。 向き合う兵士2人が互いに一歩を踏み出した。足元は昨晩の冷え込みのせいか、霜が降りている。しかし、兵士はそれすら気にも留めない様子で相手への殺意のみで前進んでいく。 刹那、1人が斬りかかる。後退し避けられた切先は、止めきれず地面に突き刺さった。 この好機を逃さず、兵士は、兵士に蹴りを見舞った。だが、地面に降った霜は兵士の味方はしなかった。兵士の足は相手に当たることなく空をきり、兵士は底の見えない地面の先は落ちていったーーー。 「お母さん、みて。蟻がいるよ」 幼い子供が地面を指さす。さした先には、霜のついた綱に群がる蟻と、綱から落ちた蟻がもがいていた。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!