神殿騎士マックス2

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神殿騎士マックス2

それから数日経ったある日の事だ。 珍しく地下墓地での修行ではなく、寺院内のエルマの自室に呼ばれてだ。 とても簡素な部屋で勉強用の机と本棚、客を招く時の机と椅子4脚あるくらいで、その内2脚は部屋の隅に置かれている。 ちなみに勉強机には何度も読み、脚注をつけているボロボロの聖典とノートが置いてある。 エルマ曰く一般の修道士達が寝食する部屋よりは広いし、寝室やお風呂がついてるからね、と言ってバザーで出せない欠けたクッキーとヤクの乳をカップに注いでマックスに出す。(ちなみにエルマは自分用には紅茶を用意している) 「これから先私の護衛騎士になるマックス氏にはちゃんと話しておこうと思うんだよねぇ...これから起こる事をね」 「これからおこるって...預言...ですか?」 「預言...うーん本当の所ちょっと違うけどそんな所...教皇様やヘルムートのおじさまにも教えてはいるんだけどちょこちょこ神託って言って表に出してるだけで、実は20年間ほど起こる災害や紛争や戦争とかの出来事ほぼ分かってるんだよね」 そう言って勉強机に置いてあったノートを持ってくる。 「例えば今年の秋は作物の病気のせいで飢饉が起こるから、バーレとライゼンハイマー領にはちゃんと3年前から備蓄を増やしておいてるし、救済院を作ってもしもの時乗り切れるように準備しているんだ」 「?そんな神託の発表聞いてないです」 「神託として公表する為には王家からのお墨付きがないとだからねぇ...あの王様全く動かないし本当は王様にも教皇様経由で助言してるんだけどあの王様さぁ信仰心が無いから聞いてくれなかったんだよね...そのせいで自分の立場が悪くなるのにさ、だいたい隣国の諍いで勝つか負けるかそんなのしか気にしない愚か者だよ」 ペラペラとノートをはぐってあるページで止める。 「まぁきっと来年の春くらいにやっとこ12歳になるから王様に直々に会いにいくけどね、大体謁見に12歳以上とか年齢制限するとか意地悪よねぇ...あ!マックス氏にもついて来て貰う予定だからその時は年齢誤魔化させてね?でさっきの件も含めて忠告してやらんきゃならんのよ...王様このままだと2年もしない内に最悪死んでしまって王太子にその座を明け渡さなきゃならない事とかね」 「ええ!」 まさかの話にマックスは驚きを隠せない。 「でも一番やばいのがね、この先大きな内戦が起こる事なんだよね...」 「ええええ!」 「私はほら平和主義者じゃない?王家のゴタゴタのせいで戦争なんておきて国民が苦しむのも嫌だし私貴族のままで大人になったら酷い目に遭うはずだったんだよねぇ」 「エルマ様が酷い目にって!」 地下墓地でアンデッドキラーとして無双している人物が平和主義者なのか?と一瞬思ったりもしたがそれ以上にエルマが酷い目に遭う事の方が驚きだ。 「まぁ内容は伏せるけどそのせいで私自殺するし、ライゼンハイマーの家族も全員処刑されちゃうし散々な訳でさ、それを何とかしたくて預言者だって言ってここに置かせて貰ってるんだ、教皇様とおじさまは本物だって信じているけどね?」 「エルマ様が?し...死んじゃうんですか!嫌だ!」 「やだなぁww死にたく無いから預言者になったんだよww」 エルマが死ぬという事に子供らしく嫌だと言うが当の本人はケラケラ笑う。 「でももしかしたらって事が有るって事なんですよね?」 「まぁね、だからこの手で破滅フラグをぶっ潰す」 「破滅フラグ?」 「あー戦争の原因を潰すって事」 「そんな簡単に潰せるものなんですか?」 「原因と時期は分かるし、それを潰す為に地下墓地で浄化しながらレベル上げして神罰系の奇跡を使える様になった!まだ『蝗の災厄』しか覚えてないけど、『神罰の雷』まではマスターしたい!見た目がガチで神罰っぽいし預言者らしいじゃないww雷ばばーんってww」 「ええええ!まさかその演出のためにずっとあんな恐ろしい場所で延々と?」 地下墓地の様々なゾンビ、スケルトン、ゴースト地獄にマックスが一緒に挑む前は10歳から1人で挑んでいたと聞いていた...しかも単独で30階までは攻略していたのも凄いが、流石に盾役の戦士を仲間にしたかったのでまさかその為の共犯者もとい仲間が欲しかったのではないか?とも後々マックスは思う。 「恐ろしいって言われてもなぁ、ゾンビ映画とか平気な人だったし、奴らエリアヒールで浄化しちゃうし聖職者クラスだから加護もあるし別に怖くもないしねぇ、しかも浄化させてるからしばらくは綺麗になるし、善行値上がるし」 「笑えないですよ...それにしても話を聞いて思ったのですがエルマ様はご自身が預言者だって信じてはいないんですか?」 「そうだねぇ...前世で読んだ物語として知っているっていうイメージ?小説とかおとぎ話的な?そんな感じなんだよねぇ」 「それが預言じゃあないんですか?」 「んーでも直接神様から聞いたって感じじゃないんだよねぇ」 「でも預言を知る方法ってそれぞれ違うじゃないですか?聖マーシャは直接だったけど聖ジョシュアは天の使いだし、聖ダニエラは囚われていた南のテルニ国の王の夢を解き明かす事で預言してますから」 「ふむ、マックス氏意外と勉強家だねぇw」 「お父さんが信仰深かったのでよく聖典の教えを話してくれたし、毎朝の練習前の修道士様のお話ちゃんと聞いてますから」 「うむ偉い!」 「いやそうじゃなくて話をずらなさいでくださいよ!」 「まぁその辺は特に重要な事じゃないんだよ...これから話す事をよく聞いて欲しいんだけどね、内戦の原因は第二王子のジルヴェスター殿下で彼は王位を簒奪するんだ。それから国はジル殿下率いる北領貴族と北領騎士団と今後生まれてくるであろうコンラート殿下の子アガーテ王女率いるロストック領を中心とした南領貴族と南領騎士団との戦いが起こるんだよ...」 「えええ!」 そしてエルマはざっくりと双翼戦争と呼ばれる出来事とその原因となる簒奪王ことジル殿下の話をする。 ノートの開いたページをマックスに見せる、そこには年表が書かれ、その横にさらに細かくいろいろ書かれている。 「このノートはその20年の出来事を書いたノートで預言の内容を書き出してそれが実際どう成就したかを書いているものなんだ、この存在はヘルムートおじさまと教皇様しか知らないもので何かあった際にはこれを持ち出すなり処分するなりして欲しいってお願いしているんだ、で巻き込む形になるかもだけどマックス氏、これから私はその双翼戦争を起こさない為にこれから本格的に動く」 「はい」 「その為に地下墓地にいる以上の危険な目に遭う事もあるかもしれない、それでも護衛騎士になって貰ってもいいかな?」 「もちろんです!」 「即答!」 マックスはエルマに感謝の気持ちしかないのだ、居場所を作り、父の様な強い神殿騎士の力を持つ事ができたのだから。 「僕はエルマ様の盾としてこれから先ずっと生きていきたいのです!だってエルマ様は家族以上の存在なんです!それに預言者様の護衛なんて栄誉じゃないですか」 「そうかぁ...そうだね...ありがとう!これからも頼むよ!」 そう言ってエルマはマックスの肩にぽんと叩く。 「ただ団長が言ってた功績を上げるのが先ですがね」 「あははそりゃあそうだね、じゃあ50階のダークリッチ攻略して証を手にするしかないね!」 「えええ!50階!!」 終始驚きを隠せないマックスではあったが兜越しではあるが笑顔を浮かべた。 そんなこんなで7か月後にダークリッチを倒した証であるエクソダスロッド他の戦利品や何度もダークリッチからの攻撃により衝撃を受けてボロボロになったマックスの鎧等から功績が認められ、晴れてマックスはエルマの専属の護衛騎士になれたのである。 その頃には片手剣から大剣装備をメインとし、エルマを守るためにディフェンス面を重視した戦い方をするようになってはいたがクラスは中期クラスの『ナイト』のままでいた。 一度上位クラスになってしまうと癖がついてしまって変更が難しいためだ、まぁ術師の能力はからっきしなので本人としては純粋なナイトの上位クラスであるガーディアン(ガードメインの騎士)かあえて機動力と得るためにビーストライダー(大型魔獣を騎乗し戦う騎士)になるかはもう少し大きくなってからにしたほうが良いかもと思ったからだ。 出会ってずっと側に仕え続け、友人でもあり敬愛すべき存在として共に居続けた。 ーーーーー ※ゲーム豆知識 聖典 トラウゴット教の教えが書かれている書物。 人類の成り立ちからエアヴァルド王国の成り立ちまで書かれている。 その中には堕天から悪魔になった存在の事や大きな出来事が起こる際に預言者が現れ導く事など書かれている。
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