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「オカマは黙っとけよ!」
私はなぜ泣いたんだろう。
言われ慣れた言葉なのに。
「リイト、テメーっ」
キンヤが私を庇ってくれたからかしら。高校三年生の時のように。でも殴るなんてやり過ぎよ。
蓮美というリイトの追っかけをしている、唇なんて殆ど真っ黒な、かなりパンクな容姿のウェイトレスが飛んできた。このファミレスは私たちがホームにしているライブハウス『セブンズロック』の斜向かいのお店。従業員もお客さんも深夜のこの時間、セブンズロックで見かける顔が多い。
方々から何事かという興味の顔が向けられている。
「リイトさん、大丈夫ですか!?」
「ああ、わりーな」
リイトは蓮美に手を貸してもらい起き上がった。横からパンチを喰らったからだろう、唇の端が僅かに鮮血している。
「ここはキンヤの奢りだからな」
リイトはキンヤをひと睨みするとファミレスを出て行った。俯きながら歩く彼の背中がとても寂し気に見えて、私の心はチクッと痛んだ。
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