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「ユキちゃんですよね? 私、リイト様のファンなんです」
「あたしも~、握手してください」
ユキはおずおずと右手を出した。気の強そうなつり目の女の子がユキの手を自分の体の方へ引き寄せるようにして握った。途端、ユキが顔を歪ませる。痛いと呟く。
「絶対歌ってくださいね。それがファンの望みですから、ねっ!」
「ちょっと、あなた何様?」
私は立ち上がっていた。臆面もなく念を押してきて、それも敵意の加減で手を握った彼女に私は憤りを隠せなかった。
「サブリナさんはすでに部外者でしょ? オフィシャルサイトで脱退したって書いてあったし。私は死蝶のユキと話しているんです」
開いた口が塞がらないとはこのことだろうか。もはや悔しさも憤りもなかったが、もう一人、女子力高目なファッションの女の子がユキに放った一言には身震いを通り越して脱力した。
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