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こちらが多く語らなくても事態を把握してくれる変わりに。
知ってほしくない事柄までも見抜いてしまう。
菜穂にとって、この相談は諸刃の剣。
何故なら彼女は、知ってほしくない大きな物事を抱えているのだから。
それを知ったら、男だからこそ全く協力してくれないだろう。
けれど、困っているのは間違いない。
例え諸刃の剣でも、ここを頼るしかないのだ。
もう、彼女には、これ以上の手段がない。
「先生、きっと、ストーカーなんです。菜穂、知らない内にモテちゃうから、だから……っ、きっと、菜穂に恋したストーカーの仕業なんだと思います! だから、だから、ストーカーを……っ……やっつけてください!」
小さく握った両拳を顎元に添え、肘でたわわに実ったものを寄せ、滴が零れそうなほど潤ませた瞳で見上げ。
恐怖に満ちたように、言葉を震わせた。
その姿は、彼女の容姿が端麗だからこそ目を離せない愛らしいポーズ。
しかし、同性から見たら「あざとすぎる」と嫌われる媚びたポーズ。
そのポーズは異性に効果覿面……だが。
桂木には、鼻で笑うしかできない程度の幼いポーズだ。
桂木は人差し指を一本、目の前でピン、と立てる。
そして、嘲笑いを口元に浮かべながら、哀れな美少女にその指先を向けた。
「う・し・ろ」
その言葉と共に、指を一回転、くるりんと回した。
「え……?」
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