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返せ、そっちが金返せ、守銭奴、泥棒、などなど汚い言葉の殴り合いをする2人に、流石に耳が痛くなり始めた桂木は自身のシャツの胸ポケットからスマホを取り出し、親指でササっと操作する。
その、次の瞬間。
ジリリリリリリリ
耳をつんざくようなベル音が部屋中に響いた。
罵倒しあっていた2人は、流石にその騒音に耳を塞ぎ口を閉ざした。
2人が静かになったのを見計らって桂木はベルを止め、スマホを摘まむように持って2人に見せつける様にプラプラと振りながら「さて、証拠もあることだし。もうこの話の幕を閉じようか」とつまらなさそうな表情で告げた。
それに菜穂は自分が有利と悟り「ほーら、証拠があるから私の勝ちよ。アンタは泥棒。私は被害者。私の物をとってこのか弱い心を傷つけたんだからちゃぁんと慰謝料も支払ってよね?」と勝ち誇ったように嘲り笑った。
その殊勝な態度に「てめぇ……」と要が怒りで歯を食いしばり、今にも怒鳴らんばかりの様子に「あー、違う違う。ぎゃーく」と桂木が振っていたスマホを2人の場所を入れ替えようとするかのようにくるくると回した。
その動作に菜穂も要も訝し気に眉をひそめた。
顔には「どういうこと?」という疑問が表情として描かれていた。
「つ、ま、り。証拠、めっちゃあるの」
桂木は、にまっとした笑みを浮かべると言葉を続けた。
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