-5 あの人の鮮度

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 -5 あの人の鮮度

 急いで顔にかかっていた濡れタオルを剥ぎ捨てる。  フぁッ、ハっ……はっ……。 「俺を殺す気か!」 「だってだって首とか冷やしても揺すっても全然起きなかったし! 他にどうすりゃよかったのさ!」  公理さんにキレられた。ふぅ。まじ死ぬかと思った。かなり動揺した。まだ心臓がバクバクする。  こんな直接的な死の危険はなかなかないぞ?  はぁ。……まあ、生きてりゃいいか。なんか疲れたな。  ゆっくり起き上がろうとすると少し眩暈がした。酸欠かな。息の根を止められるのと歯を折られるのとどちらがマシかな。家のこともヤバいが公理さんも別の意味でやばい。早く解決しないと色々な意味で体がもたない。  忘れないうちに情報の整理。  俺は小藤亜李沙が死亡する少し前と念じて目を閉じた。  惨劇の場所、あれはおそらく家の2階の正面の部屋だ。  正面に影が折り重なっているのが見えたが、話をしていたのは2人だった。他は最後に少し会話に加わったが基本的にはこの2人。今回夢で知りたいと思い浮かべた過去が小藤亜李沙だったから他の人物の声は少し聞こえにくいのかもしれない。他の人物に焦点を当てればまた違う結果が出る可能性がある。『スクープOK』で小藤亜李沙以外にも写真は何枚かあった。何回か試してみるべきだろう。  まずは得られた情報の確認だ。  見えたのは薄い影と濃い影。薄い影から女の声がしたからそちらが小藤亜李沙だろう。濃い影は男の声だが人定は不明。濃い影のほうが今回の呪いの中心なのかな。ただ貝田弘江のような染み出すような悪意や害意は感じなかった。それよりあの雑音と砂嵐。あれが呪いを形作るもの、今回の『呪いの媒体』のように思える。あれが何か、なんとなく想像はつかなくもないがまだ情報が足りない、保留。  小藤亜李沙は足がないから逃げられないと言っていた。折られたと言っていた。折られたから、逃げられない。  男の方は応答がおかしかった。家を素晴らしいと言っていた。亜李沙の足は男が折ったのか。これも情報が足りないな。あれは小藤亜李沙が死ぬ少し前だ。あの後死んだのだろう。あの一緒にいた声の男に殺されたのだろうか。まだわからない。橋屋家の時は公理さんが一家が殺されるのを見ていた。今回はは何か見ていないだろうか。
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