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「うん? なんだ?」
「この人とこの人、それからこの2人は多分だいたい同じ時に死んでる。あとこの人は他の人より古い」
「……なんでわかる?」
「がんばって思い出した。その、痛み方が同じくらいだった。1番古いのは顔は全然わからないけど、このネックレスしてたと思う、あの、ヒントになった?」
「まじ最高。小藤亜李沙と他のグループは痛み方はだいぶ違った?」
「ゔ……ん、他は少なくとも目が痛んでた。あとはおんなじような変な色をしてた人のセット。小藤亜李沙は目は1人だけ普通だった」
思い出してくれたのか。本当にありがたい。俺には影の見分けがつかない。これで目処が立ちやすい。あんな嫌がってたのにな、悪いな。
1番新しく死んだのが小藤亜李沙だ。小藤亜李沙とあの家で一緒にいた男。あの男は死んでいるなら腐敗していないはず。最初に見たリビングで公理さんは新鮮な男は見ていない。そうすると生きているのか。いや、全ての死人があの場に現れなかった可能性もある。
「それからさっき夢の中で小藤亜李沙と一緒にいた人はこの人だった」
越谷泰斗?
ますます顔色が悪い。扉の中も見たのか。見てくれたのか。あんなに嫌がっていたのに。すまないな。
「なんでわかる? どんな風に見えた」
「多分ハルが小藤亜李沙を見てた時、すぐ目の前、真後ろにこの人がいて……黒い蝿がたくさん表面を動いていた。それでこのタトゥーがチラッと見えた、ごめん、ちょっと休憩」
公理さんは青い顔をしてソファにごろんと寝転がり、俺はその上に毛布をかけた。ありがたい。やはり視覚情報は圧倒的だ。
鎖骨を地平線か水平線に見立てた夕焼けまたは朝焼けのタトゥー。それから蝿。俺には黒い粒にしか見えなかったが公理さんには明確に蝿に見えてるんだな。確定か。俺にも影の姿で見えていたということはこの時点で越谷泰斗は生きているわけだよな。それで蝿塗れ? 意味がわからない。狂ってるのか? そういえば夢の中でも言動がやばかった。……つくづく公理さんには気持ち悪いものを見せてしまって申し訳ない。
それにても嫌だな。夢の中ってマスクとか水中眼鏡持ち込めないよな? 夢だからガスマスクとか想像するとポップしないかな。そもそも夢じゃ記憶がないから思い浮かべられないものな。俺には黒いノイズにしか見えないし。夢がない。
次のターゲットは中是秋名。他より古いと公理さんが指摘した女性。20代前半くらいかな。赤っぽい髪の内巻きのロングヘア。眼鏡をかけてて若草色のノースリーブを着ている。首回りに太陽のマークが連なる個性的なネックレスを身につけている。
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