-6 呪いのかたち

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 う……ん。そっと目を開けると心配そうに俺を見る公理さんがいた。んんん。……痛くない。殴られてないのか。いつもこのくらいがいいな。 「勝手に寝ちゃうとかひどい」 「今日はもう見にはいかない。家に止められた」 「そう。俺もちょっと家と話した」 「話せるのか?」 「うーん、なんていうか、声としては聞こえないんだけどなんとなく考えてることがわかるというか」  そういえば夢は公理さんに話しかけていたようだった。 「何を話したんだ?」 「一方的に話しかけられただけ。ありがとう、っていうのと、起こしやすくするって」  公理さんに殺される可能性は減ったのかな。重畳だ。 「そういえば幽霊は見えた? 声も聞こえたのかな」  俺の目には影にしか見えなかったけど、もし公理さんに見えていたら鮮明なはずだ。それに家の声が聞こえたなら幽霊の声が聞こえるのかもしれない。 「幽霊? 声は聞こえなかったな。でも幽霊は見えた。いつもより長い間扉が開いてた。家が頑張って見せてくれたのかも」 「黒い影は?」 「黒い影? 街灯はついてたけど基本的には暗かったから気がつかなかったよ」  うん? 暗い? 街灯? 街灯がついているということは夜だよな。夢は夜だったのか?  そういえば俺が夢を見る時はだいたい真っ白だ。そうか、俺は基本的に何も見えないのか。  俺が夢で見られるものを整理しよう。  あれは家が見せている夢。だから俺でも家は明確に見える。そして呪い。これは恐らく幽霊ではないか、幽霊であっても呪いという存在に変質してしまったのだろう。だから、見える。次に俺が見たいと望んだものかな。橋屋家の時は橋屋一家。小藤亜李沙の時は小藤亜李沙。今回は死ぬ直前の中是秋名。広く被害者ということで積み上がった死体が見えたのかな。いや、影の濃さが違った。ひょっとしたら呪いに影響を受けた者が呪いの影を帯びてみえるのかもしれない。  でもそれ以外は何も見えないから白い。夜の闇も見えない。恐らく太陽の光や気象の変化、呪いと無関係な物は見えない。俺が認識できる情報は思ったより限定されている。当然見えていると考えていたものが見えていない。これは留意すべきだ。 「ハル、さっきの夢の中でハルの前にいたのはこの越谷泰斗と中是秋名。越谷泰斗が中是秋名を引きずってた。頭から血が出てたけど、生きてるかどうかはわからない」 「多分まだ生きてはいたんだろう。間もなく死んだと思う」 「そう……」  これまで得た情報の整理をするか。  判明したこと。
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