-6 呪いのかたち

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「ねぇハル、俺にも話して」 「……でも公理さん苦手だろ?」 「それはそうなんだけどさ、一緒に考えたほうがいい案が見つかるでしょ? 1人よりは2人」 「……そうだな。でも無理しないで。公理さんが肝心なところで倒れたら俺は死ぬ」  公理さんの見た情報を加味した大量不審死事件の全体像。やはり視覚情報は大きい。  時点の異なる小藤亜李沙と中是秋名の2人が死ぬ直前にあの家で一緒にいたのは越谷泰斗。そうだとすれば今回の呪いの中心、『呪いの依代』は越谷泰斗に思える。しかし公理さんは違う可能性があると言う。 「なんでそう思う?」 「貝田弘江は人じゃなかった。越谷泰斗は人だった。越谷泰斗がどういう状況なのかはわからないけど、あれは人だと思う。なんだか様子が違いすぎて同じものには思えない」 「そうなのか? 俺には同じように濃いめの影に見えたけど」 「そう? おかしいな」  見えているものが違うのか。もともとその可能性はある。  不確定なことは多いから決めつけないほうがよいだろう。保留。 「他に何か見えたものがあれば教えて欲しい」 「うーん、今見たのはそのくらいかな。あとその前の夢。階段しか見えなかったけど……虫の死骸とか蛹とかそんなのだらけだった」 「まぁ、そうだろうな」  公理さんの顔色が青い。基本的にはあの2階の部屋は腐乱した死体が積みあがっているはずだ。そこから導かれる帰結。その光景。公理さんにこれ以上の負担は負わせられない。 「それで……部屋の中も見る。嫌だけど」 「急にどうしたんだ」 「なんかちょっと、悪いし。夢じゃなければ俺が気絶するだけでしょ?」 「病まれると面倒くさいから無理しなくていい」 「無理じゃないもん」 「じゃあ効率的にいこう」  どういう心境の変化かはわからないが、申し出自体はありがたい。けれども不要なリスクを取る必要はない。最終的には見てもらう必要はあるが、今はまだその時じゃない。でも公理さんは言い出したら聞かないからな。それはそれで面倒だ。
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