-1 呪いの家のうわさ

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 その日、朝から嫌な予感とともに起床した。  寝起きから頭が重かった。  俺は高校の寮で暮らしている。朝飯時、顔色が悪すぎて寮の調理士さんに心配された。首筋も既にチリチリしている。極度にヤバい予感。フケようか真面目に考えたが、撤退可能性がある今のうちに付き合った方が結果的にましだろう。  北辻駅に到着すると、とうとう頭痛まで始まった。近づく前からこんなに酷い予兆があるのは初めてかもしれない。これ、多分家の中に入ったら死ぬ。そんな予感すらする。だからやはり今のうちになんとか公理さんをかわすしかないな。  公理さんは俺より背が高いしやたら握力がつよい。酔っ払いって、なんかのタガが外れるのか、異様に力が強いんだ。俺も体格が悪い方じゃないが酔っ払った公理さんに抵抗できたことがない。だから公理さんの頼み事は、公理さんが二日酔いで弱った朝が一番逃げやすくて都合がいい。  北辻駅の改札を出たが、案の定公理さんはいなかった。やはりな。軽くため息をついてLIMEを送ると今起きたと返事があった。まあ公理さんの家は隣駅の辻切(つじき)センターにあるからすぐ来るだろう。  辻切センター駅はこの辺りのターミナル駅で3車線が乗り入れる繁華街だ。北辻駅は地下鉄神津(こうづ)線で1つ北側にある駅で、辻切センターから北側に向けて緩やかに続く飲食店街と、辻切センターのベッドタウンとしての住宅街が混在している。そして西口から正面を見上げると、その住宅街のある方から強烈な不運の予兆があった。ああ、ヤバそうだなこれ。
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