-1 呪いの家のうわさ

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 公理さんを待つ間に呪いの家について検索する。  正直、俺はこの北辻駅に着くまで呪いの家なんてあんまり信じていなかった。不運の予兆があってももっと何か具体的な危険があると思ってたんだ。たとえばその家が老朽化してて倒壊して怪我をする可能性とか、ヤバい奴が住んでて襲われる可能性とかもっと物理的な危険。  俺は基本的に幽霊がいるいないは気にしない。なぜなら俺は幽霊が見えないから。  誰かが死んで幽霊が出る家というのはたまに聞くが、見えない以上、俺にとって幽霊の存在の有無はたいした意味はない。そもそも幽霊1人くらい余分に取り憑かれてもあんまり意味はないんだよ。呪いによってすでに十分に不幸だからな。だからこれまで不用意に近づかないよう避けてはいたものの、呪いの家系の話自体は気にしたことはなかった。  ああ、でも本当にヤバイなこの家。築15年のはずなのに、ざっと検索しただけで50人を超える数死んでいる。これは幽霊ってレベルじゃないだろう。何か別の要因で呪われているんじゃないのか? そして案の定、その呪いの家は不運の予兆のする方角にあった。  二日酔いで青い顔した公理さんが現れたのはそれから30分経ってからだった。俺より顔色悪そうだな、この人。  顔色の悪い2人は揃って西口に出て歩を進める。北辻駅前の飲食店街にはまだ人通りは少ないけれどもすでにランチが始まっているところも多く、その匂いに公理さんは口元に手を当てて軽くえずいている。二日酔いに濃厚な豚骨ラーメンの匂いは辛いだろう。 「そんな調子悪いならまた今度にしない?」 「大丈夫、ちょっとこっちも急いでる。ほんとうはもっと早く来たかったんだけど、仕事が忙しくて伸びててさ」  足早に飲食店街を抜けて住宅街に足を踏み入れる。この坂道を少し上がると件の家が登場するはずだ。  しかし俺たちはその坂の手前で異常さに思わず足を止めた。
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