序章2 幸せなマイホーム、になりたかったあの日

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 でも人生、ううん、家生ってうまくいかないよね。  位波さんのお父さんの帰りは遅くて、帰ってきた時はだいたい酔っ払っていて、お母さんを殴るようになった。誰のためにこの家を買ってやったんだ、とかローンが、とか言ってお母さんを殴る。お父さんがお母さんを殴るのは僕のせい。悲しい、ごめんなさい。  お母さんは一日中男の子と一緒だったけど、男の子が泣くとイライラして怒りだすようになって、昼は男の子にご飯をあげたらソファでずっとぼんやりすることが多くなって、男の子が泣いたら壁とかにいろんなものを投げつけたりするようになった。  お部屋がちょっとずつ汚くなっていて、それにお父さんが怒るようになって、お父さんは帰ってこなくなった。僕、自分で掃除できたらよかったのにな……。  柚ちゃんもお部屋に籠るようになった。リビングにいると、僕から見てもよくわからない理由でお母さんに怒られて叩かれるから。どうして?  2階の部屋で柚ちゃんは毎日しくしく泣いていた。泣かないで。でも、僕には何もできない、悲しい。  僕は人間じゃないからよくわからないけど、これはやっぱり『幸せなマイホーム』とはちがうよね……。僕を売る時に説明していた不動産屋さんの人が言ってたことと違うもの。笑顔なんて全然なかった。  でも僕は家だからどうしようもなかったんだ。何かしてあげられたらよかったんだけど。本当にそう思ってた。
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