序章2 幸せなマイホーム、になりたかったあの日

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 でも、しばらく経って変化が起こった。  位波さんのお母さんが死んじゃった日を繰り返すのをやめて、瀧本さんの一家を観察するようになった。  位波さんのお母さんは、ここは私の家だ、出て行け、といい始めた。でも、瀧本さんのご一家は位波さんの声が聞こえないみたい。位波さんが亡くなってるからかな。  確かに位波さんは最初から住んでいるよね。このまま位波さんと瀧本さんのご一家が一緒に仲良く暮らせないのかな、と僕は思った。  瀧本さんのお姉さんは朝は学校に行って、夕方に帰ってきて、柚ちゃんの部屋で漫画を描いていた。絵が上手ですごい。  柚ちゃんの部屋には位波さんのお母さんは入れないみたいだったけど、男の子の方は壁をすり抜けて入れていた。透き通ってるのに、入れる人と入れない人がいるのって、なんだか変なの。  男の子は瀧本さんのお姉さんの漫画を見て、すごーいって褒めて、久しぶりに笑顔になった。よかった。位波さんのお母さんも笑ってくれるといいんだけど。  そのうちお姉さんは男の子がいるのに気がついた。お姉さんは最初はびっくりしてたけど、男の子はニコニコしながらすごくたくさんお姉さんの漫画を褒めたから、お姉さんと男の子は仲良くなった。男の子は元気になって、リビングだけじゃなくて夜中におうちを走り回るようになった。よかった、楽しそう。そう思った。
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