-6 あの家の影

5/6
前へ
/458ページ
次へ
 俺はあの家の呪いを解く。  呪いを解くためには呪いが何なのか、呪いの姿を特定しなければならない。  あの家はいつも呪いが発動しているのか。  否。俺が最初に見た橋屋家の状況に異常は見当たらなかった。閾値に達して呪いがあふれ出るまでは物凄く気持ちの悪いただの家だ。でなければ流石にあの家を購入しようという者はいないだろうし、家族がしばらく正常に暮らすこともできないだろう。  それならば異常、つまりいつ呪いが発動したのか。  先程の夢を思い浮かべる。貝田弘江が橋屋家を訪れた時、その姿はほとんど真っ黒になっていた。恨みとか憎しみとか、そういったとても嫌な感じがした。だがその時点では影が襲われていたわけでもなかったし、他に異常は発生していなかったと思う。  異常が発生したのは貝田弘江が2階に上ってからだ。  まず最初に黒い瘴気が天井から降ってきた。だが現象面では瘴気自体は不幸を生み出してはいない。特定の指向性は感じず溢れているだけのように感じる。俺が坂道の下で見たこぼれ落ちていたものと同系統かな。  不幸が発生したのは瘴気があふれ出た後のように思える。天井から瘴気が落ち始めた後に橋屋の1人が階段から転げ落ちて貝田弘江が踊り場に現れた。公理さんの見た様子から、貝田弘江が影、つまり橋屋をゾンビに変質させ、ゾンビは他の影を襲った。公理さんは『黒い幽霊』で貝田弘江と橋屋のゾンビが繋がっていると言っていた。『黒い幽霊』が呪いはの姿なのだろうか。  この考察から考えられる帰結。呪いの根本は2階にある。  貝田弘江は2階にいると思われる呪いの根本と直接接触することによって、呪いが発動し、瘴気が溢れ出た。そう仮定する。そうすると貝田弘江は呪いを発動させるための『呪いの依代』のようなものだろうか。
/458ページ

最初のコメントを投稿しよう!

143人が本棚に入れています
本棚に追加