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-7 第一夜の終わり
公理さんと手をつないでゆっくり目を閉じる。
閉じた目に浮かぶリビングの光景。電気はついていた。柚は帰宅しているのかもしれないが、今ここにはいない。
「家族会議してるっぽい」
「そうか、姿は見えないけど夢と同じで個体認識してれば微かに声が聞こえる」
これで最後だ
あの人いかれてるよ
もう嫌
あの人が来てしまう
夢じゃないせいか夢より明朗に聞こえる。
まずは退路の確保。リビングの窓に近づき通り抜けられるかを確認する。よし、窓は空いている。くり返す一日を止めてここから橋屋一家と貝田夫婦を外に逃がすことがクリア条件。
振り返って、橋屋家一家に尋ねる。
「貝田さんを入れちゃだめだ、入れてしまえばあんた方は殺される」
呼んだんだ
入れたくない
出ていきましょう
会いたくない
よし、話は通じる。だが答えは夢と同じか。やはり1人は出ていきたいと言っている。
俺はリビングの閉じた窓から庭に出て玄関を回り、隣家の様子を伺う。明かりはついていて、玄関をすり抜けて侵入すると見知らぬ家族が夕飯を食べていた。これは今この家に住んでいる人たちかな。
貝田家の遺族も家を売ったのかな。だが橋屋家で惨劇が繰り返されているなら橋屋家に惨劇を起こした貝田家もここで毎日をくり返しているはずだ。
食卓に背を向けると手が強く握られた。
「うわぁもうやめたい。鬼おばさんが男の人を灰皿で殴りまくってる。……でもさっきほど怖くないし、こっちにも気が付いてないみたい。ちょっと慣れたのかな」
「『黒い幽霊』はくっついてるか?」
「んん、くっついてはいない、かな。でも顔が鬼」
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