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-1 お宝を探せ!
公理さんが起きるまでにつまみが4品できた。酒は勝手にセラーからとってきてデキャンタしといた。
起きて開口一番俺を怒鳴りつけようとした公理さんは、目の前に広がる酒とつまみに振り上げた拳をそっと下した。チョロい。
残った鶏肉で作ったアヒージョ、薄切りにした蓮根フライ、茹でただだ茶豆、トマトのマリネ。それから切ったバゲットとドライフルーツ、各種チーズを皿に盛って、小皿にオリーブオイルと蜂蜜を添えた。
「……ハル、うちに住んでいいよ」
「何が見えた?」
公理さんは一瞬口元に手を当てて少しえずく。
そんなに酷いのか……。
「ごめん。もうちょっと後にして、まじで」
「わかった、すまない。それからしばらく休みなら頼みがある」
「……何?」
明らかに警戒した声。俺の信用が低下しているのを感じる。
「たくさんつまみ作っとくから俺が寝てから1時間半くらいたったら、それか少なくともヤバそうになったら起こしてほしい。どうせ明け方まで寝られないんだろ? 公理さんが眠くなったら起こして。俺は朝、公理さんが寝てる間に図書館に調べ物に行く。鍵を出しておいてもらえればドアポストから中に入れておく。友達とあの家の件は早く終わらせたいだろ?」
少し考え込む公理さんの前にあるグラスにワインを注ぐ。スペインの赤からはざらついた香りがした。俺はコーラ。チーズに蜂蜜を乗せて齧る。いいチーズはやっぱりうまいよな。俺は渋い緑茶が飲みたくなってきた。変かな? コーラより合う気はする。
「毎日同じくらいの飯作ってくれるなら」
「了解。それからできれば起こす時に殴るのはやめて欲しい」
「え~、だってハル、揺すっても起きないんだもん」
「他に方法があるだろ、首を冷やすとか?」
「首?」
「そう、グラスとか、濡れタオルでもいい」
「俺酔っ払うからなぁ」
「俺が死んだら公理さんも死ぬぞ? 声は聞こえないんだろ?」
「うぐぐ、頑張る」
次は大量不審死事件。
詳しくはまだ調べていないが、あの家の中で十数人の死体が見つかった。見つかった原因は異臭。周辺住民から苦情があり、警察官が立ち寄ったところ庭側の窓が割れて開いていて、中から死体が見つかった。それぞれの死体の関連性はない。
異臭がするということは腐乱しているということだ。公理さんが見た光景を確認するのは明日にしよう。今は気持ちよく酔っ払っているから。
「そろそろ寝る。ベッド借りる」
「おやすみ」
「ああ。また明日」
目を閉じる前に見た公理さんはつまみにご満悦のようだった。
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