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◇◇◇
こんな夢を見た。
どこまでも広がる白い空と白い地面。俺は高台に座っていた。遠くで高い建物がキラキラときらめいていたが、霞がかかっていてよく見えない。
誰かが俺の袖を引く。
「お兄さん、ありがとう」
うん? なんだ?
隣に誰かがいるような感触。だが姿は見えない。
「お兄さんすごいね。僕は話しかけても全然聞いてもらえなかったから」
「いじめられてるのか?」
「ううん、僕はどっちかっていうといじめているほうなのかな」
そうなのか? 声はむしろ穏やかそうに聞こえるが。
「次の人たちは色々なんだ。色々な人が僕の家にやってきた。なんだか僕の家で家探ししていたっぽい」
「へぇ、何かお宝でもあるのか?」
「ないよ。なにもない。でも色々探してた。その人たちは今もまだ家にいる」
「ふうん?」
白い世界。そういえば反対側は何があるんだろう。
「お兄さん、振り向かないで」
うん?
「僕はお兄さんともう少しお話がしたいの」
「なんの?」
「……そうだなぁ。お兄さんにとって『幸せなマイホーム』ってどんなもの?」
『幸せなマイホーム』? 少し、頭が痛くなった。
幸せ、か。幸せってなんだったかな。もう随分遠い響きだ。俺は不運に呪われている。幸せなんてあるのかな。住んだら幸せになる家?
それが幸運であっても不運であっても、他の者に運命を捻じ曲げられるのはもう嫌だな。それはやっぱり呪いのようにしか思えない。
俺と逆で幸運に振り切れてる奴が友人にいるが、正直ああなりたいかといわれると疑問だ。むしろ断る。普通がいい。
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