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「幸せってなんだ?」
「なんだろうね、僕にはよくわからないけど、多分住んでる人が笑ってることじゃないかなと思ってる」
それはなんだか幸せそうだな。でも。
「それは別に家が幸せなんじゃなくて幸せな人が住んでるだけなんじゃないのか?」
「そうか、そうかもね。でも僕の家に住んでる人は最初は幸せでもどんどん不幸になっていくんだ」
どんどん不幸、という言葉が俺に刺さる。俺はそもそも大体不幸だよ。どん底だ。でも俺の中には不幸以外のものもある。どん底でも、大事な友達とその思い出がある。
「不幸であっても不幸だけが全てじゃない。俺は不幸だけど大事なものも持っている。不幸だけを見ているか、それ以外も見ているのか、その違いじゃないのかな。ただ、幸せな家、不幸せな家、というのがあるのだとしたら、何かのバイアスが働いているんだろう。そちらの方向に住む者の意思や運命を捻じ曲げる何かが」
「そうか、そうかもね。お兄さんありがとう。お兄さんはその1番上のバイアスを1つとってくれた」
「俺が?」
何のことだ。
「お兄さんありがとう、話せて楽しかった」
隣で立ちあがる気配がした。つられてそちらを振り向くと、目の端に色が映る。
なんだ? と思って見ると、そこには一軒の家があった。
家。これは。そうか。これは夢。また、世界がひび割れ始める。
「家、お前は不幸なのか?」
返事の前に俺は目を覚ました。やはり頬の痛みとともに。
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