-2 大量不審死事件

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 公理さんは散らばるベリーに生クリーム、ミントがトッピングされたスフレパンケーキ。俺は野菜多めのBLTサンド。美味いな。ヴィネガーがオリジナルだ。バルサミコ、オリーブオイル、はちみつ、マスタード、ライム、赤ワイン、あとはなんだ? 値段は見なかったことにしよう。  美味そうにパンケーキを頬張る公理さんにカフェ内の視線が集まっている。あの人公理智樹じゃない? とかざわざわされてるけど全然動じないなこの人。慣れてるのか。そういえばカリスマ美容師なんだよな。  今日はシンプルに白黒ボーダーの細身のシャツに紺のシューカットのデニム。やっぱりモデルでも全然通りそうな気がする。モテるんだろうな。でもこのざわざわ注目された状況で腕相撲するのはなんか嫌だ。この店のチョイスはそれが狙いな気がする。  食後のミントティーを傾けながら切り出す。 「ゾンビ映画だった?」  ブッと茶が噴き出される。  カモミールティーのほうがよかったかな。リラックス効果がある方。なんとなく消臭のイメージでミントを選んでしまった気がする。 「うぅ、やっぱその話だよね。……うん、ゾンビ映画だったよ」 「スケルトンはいた?」 「……うーん、どうだろう、いなかった気がするけどそんなによくは見てないや」  公理さんは思い出して顔をしかめる。 「あともう1つ、貝田弘江がまだ部屋にいた時、部屋にいたのはゾンビか幽霊か」 「あ、その時はゾンビじゃなかったな。いっぱいいたけど。……ゾンビ映画になってからも幽霊の人数は多分変わってないような」  皿を端に寄せて雑誌を広げる。 「この中で見た人いる?」 「この人と、この人。うぅ、あと多分この人はいたと思う。他はわからない、急だったからなんか気も動転してたし」  小藤亜李沙と他2名の男女。  小藤亜李沙の写真を指し示す。 「ゾンビ映画になってから一番正面にいたのはこの人だろ? 配置的にはどうだった?」 「うんこの人。あとは室内にパラパラだな。他にこちらを見てるっぽい奴はいなかったような」 「変わった様子はあったか?」 「この小藤って女の子は助けて欲しそうな顔でハルを見ていた気がする。あとは……どうだろう、グロい以外は特にこれといって印象にないな。……ハル、あのこれ、やっぱ俺見ないとダメ? ここで倒れるのはちょっと……」  物凄く嫌そうな顔をする。ああ、やっぱり人目の通りやすいこのカフェを選んだのはわざとか。今もざわざわとこちらを見ている複数の視線を感じる。
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