143人が本棚に入れています
本棚に追加
-3 地獄の家
テニサーの合コン。新年会という名前で行われた飲み会で泰斗から財宝の話を聞いた。
北辻に喜友名晋司という画家がいたそうな。その画家は死んだけど自宅はまだ残されていて、家の中に最高傑作の絵が隠されているって。へぇ。泰斗って絵とか興味あるんだ。ちょっと意外。
「それを今度探しに行こうよ」
「えぇ～？ どうせ遊びに行くならもっと楽しいとこいこうよ」
「ちょっと気になってるんだ、だからお願いします！」
泰斗は勢いよく頭を下げた。
越谷泰斗は同じテニサーに所属してる私の彼氏だ。クリスマスに『君は僕の太陽だ』っていうちょっと恥ずかしい告白をされて付き合いだしたばかり。ホワイトではないけど、なかなか悪くないクリスマス。直前まで一緒にクリスマス叩きをしていた友達とはちょっと距離感が難しい。
クリスマス女子会は急な用事ができたと言って断ってしまった。それもあって泰斗と付き合っているのは大っぴらにはしていない。正直なところ泰斗が好きなのかどうかはよくわからない。でも嫌いではない、ううん、どちらかというと好きかな。顔は好み。
クリスマスに引き続いて年越しに一緒に初もうでに行くというベタなイベントをこなし、それから映画館とか神津港のレンガ倉庫街とかベタベタなコースを一通り回った感。せっかくだからテニスしたいんだけど泰斗はあんまりテニスが好きなわけではなさそうだ。まぁ、テニスはやらないことはないけどナンパ目って感じ。そういう人は多いから別にいいんだけど。
でも宝探しかぁ。正直興味ないな。でもまあレンガ倉庫は私が行きたかったところだし、泰斗の行きたいところにいくのもバランスでしょう。うむうむ。
「いいよ、じゃあ今週の土曜とか？」
「サンキュー。場所は北辻だから辻切で晩御飯食べてから行こっか」
「あれ？ 夜に行くの？」
「あー。住んでないっていっても近所の人の目があるからね。夜の方が安全かなと。それでちょっと探検して駄目だったらかえってこよう、OK？」
「うん、まあ」
その時、なんとなく少し嫌な予感がしたのは覚えている。それから他人の家に勝手に入るという罪悪感。でもそれを冒険という名の秘密のときめきが覆い隠した。
最初のコメントを投稿しよう！