-3 地獄の家

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 その日、辻切のバルで軽く飲んだあと電車に乗って北辻に向かった。その家は北辻駅を西側に進んだ高台のちょっと高級住宅地にある。着くとすごく大きな家で驚いた。芸術家ってやっぱりお金持ちなんだな。  でもちょっと臭い。生ゴミみたいな匂いがする。なんだろ。嫌だな。  泰斗に手を引かれて庭に回ると窓の一部が割れていて、泰斗はそこを指差した。ここに入るの? 無理でしょ。家の門の外で匂っていたのと違って、この中からは更にひどい臭いがする。むせ返るような肉の腐ったような、気持ち悪い匂い。うっぷ。無理。臭い自体も嫌だけど服に臭いがついちゃうじゃない。 「ねぇ泰斗、私外で待ってる」 「えっ、何で? せっかく来たのに」 「だって凄い臭いじゃん。ここ入るのはちょっと無理、坂の下のコンビニで待ってていい?」 「そう? 残念。わかった、じゃあ待ってて」  オケオケと頷いて振り返っところで頭に衝撃を受けた。
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