俺の小説を読まないで!

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「こんばんっす、大家さん」  歯ブラシをくわえたままの俺に大家が挨拶もせずにこう言った。 「あなたねえ、もう二か月滞納してますよね? 今月中には絶対払ってくださいよ、三か月までいったら、鍵、取り替えますからねっ? 入居時にそう取り決めましたよね!」 「あー……ええっと、ハイ。すんません。月末には必ず。ほんと払う気ありますんで」 「なかったら困りますよ! だいたい前も言ったけど、あなた家の前にモノ置くのやめてください。消防法……」  またいつものお説教を食らって、俺はヘコヘコ頭を下げる。  でもしょうがないだろ。お前のアパートが狭いの! 荷物が入りきらないんだよ。  俺だって、入るもんなら全部家の中に入れときますよ。  そもそも自転車置き場用意してないそっちにも責任があると思う。  ゴミ箱と掃除用具も確かに外に放置してますけど。  あとなんか捨てるのめんどくさかったガラクタとか多少溜まってはいますけども。  三十分ほどわめいて満足したのか、大家が帰って行った。  今日はカラスのうんはつくわ、肉まんは売り切れるわ、大家に文句は言われるわで厄日だなあ、なんて思うけど、寝る前にまた見たら俺の小説はますます読まれていたので、満足して、すぐ寝た。
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