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まったく科学的ではないし根拠はないが、俺は察した。
これたぶん、小説が読まれれば読まれるほど、俺が不幸になっていくやつだ!
「おい、読むな、もう俺の小説を読むんじゃないよ、お前らー!」
なんか怖いし、もったいないけど削除しよう。
そう思ってスマホから削除ボタンを押そうとした、その時。
プワァン!
「バッキャロー! どこに目ぇつけてんだ、死にてえのか、こんにゃろー!」
今時珍しいくらい荒くれたおっさんが軽自動車の窓から怒鳴りつけ、俺はぺたんと尻もちをついた。パリン。
……ぱりんとな?
「あああああーっ!」
尻もちは別にいいんだけど、その拍子に俺の手から滑り落ちたスマホが地面に叩きつけられて、無慈悲なヒビが入ったようだ。
画面だけならまだ、なんとか……と焦る俺の手から逃げるように通りがかった小学生の足が華麗にシュートして、スマホが道路へ躍り出る。
「うっそだろ……うそだと言ってよバーニィ……」
タイミングよく一台のトラックがよりによって俺のスマホを轢き逃げしていった。
普段この道、トラックなんか通らねえだろうが!
駆け寄って救出した俺のスマホは、すでにガラス片と半導体の死骸になっている。
なんという災厄!
「だめだー! だめだみんな、読むなああああああああ!」
こうしている間にも俺の小説が読まれていく。次は俺の命が危ない!
俺は泣きながら走った。
手にはさっきまでスマホだったものを握りしめて。
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