67人が本棚に入れています
本棚に追加
真夜中、錆びたカッターナイフを持ち出した穂希は、一呼吸おいてからそれを手の甲に宛がった。
浮き出た血管を凝視して薄い皮膚を切り裂くと、線状の傷からは忽ち血液が溢れ出てくる。
どうやら意識的に及ぶ自傷行為は、普段衝動的に行う自傷行為よりも、何倍も痛むらしい。
呼吸を整え、傷口をティッシュで押さえながら包帯を探す。
伸縮性のある包帯を手馴れた様子で巻きつけると、白かった布は瞬く間に鮮やかな赤に染まった。
最初のコメントを投稿しよう!