窓際のきみ

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「高杉様、コーヒーなら俺が…」 「僕は、彼が良いんだ。それに、忙しい彼を呼んでこうなったんだから、彼は悪くない。しかも、身を呈して僕にコーヒーがかからないようにしてくれたんだから、怒らないで上げてね」 友也が「高杉様」と呼んだ彼は、そう言うとにっこりと微笑んだ。 その後は、友也に見守られながら無事にお代わりをお出しする事が出来た。 「それにしても…、なんで熊さんだったんだろうね?」 バイト終わりに更衣室で着替えながら、友也がぽつりと呟いた。 友也は知り合いの喫茶店でバイトしていたらしく、俺より後から来たのに接客のプロだ。 しかも、前の常連客まで来てくれる程に人気があって、人当たりが良い。 俺みたいに愛想が悪い奴にでも、気さくに話しかけてくれる。 ちっこくて懐っこい、実家の豆柴みたいな奴。 「お前らが、忙しいからじゃないか?」 そう答えると、友也は 「そうかな?な〜んかあの人、気になるんだよな〜」 腕を組んで考え込む友也に、俺は思わず 「気になるって?」 と、前のめりに聞いてしまう。 だって、デカイ、むさい、愛想悪いの三拍子揃った俺より、小ちゃい、可愛い、人懐っこいの三拍子が揃った友也の方が数千倍好かれる確率が高い。 「あの人、絶対にドSだと思う」 目を座らせて友也が呟いた。 「はぁ!え!ドS?」 可愛い友也の口から、とんでもない単語が出て来て驚くと 「熊さん、気を付けてよ!見た目は熊でも、心の中は子リスちゃんなの、俺は分かってますから!」 手を握られて、真顔で言われて赤面する。 「ほら!その顔!あの人の前で見せたらダメですよ!熊さん、人見知りなだけで、本当は良い人ってバレたら大変ですからね!」 友也は鼻息荒くそう叫んだ。 「俺、思うんだけど、熊さんには優しい人が合ってると思いますよ」 制服のシャツを脱いで、友也が自分のTシャツに着替えようとしている時、背中に着けられた跡に俺が思わず動揺してロッカーにしこたま頭をぶつけると 「大丈夫?熊さん?」 って、友也が近付いてきた。 「友也!頼むから、一先ずシャツを着てくれ!」 そう叫ぶ俺に 「何?熊さん、真っ赤な顔して」 と、不思議そうに呟かれる。 「お前……背中、背中にキスマークが…」 見てしまった俺が、真っ赤になってアワアワしてしまった。 すると友也も真っ赤になって、慌ててTシャツを着ると 「クソ健人!」 って呟いた。 「え?友也の恋人って、男なのか?」 腰を抜かした俺に、友也はケロっとした顔で 「あれ?言ってなかったっけ?俺の同棲している恋人、男だよ。超イケメン!あ、熊さん、取らないで下さいよ」 と答えた。 「と…取らないよ!って、えぇ!」 驚いて友也を見ると 「え?熊さん…高杉さんの事、好きでしょう?いっつも熱い眼差しで見てますもんね」 ニコニコ笑って、座り込む俺に手を差し出す友也。
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