【2000字掌編】サンタクロースは全力疾走

7/9
前へ
/9ページ
次へ
 12月20日、望海は渡したいものがあって、啓吾を近くのカフェへ呼び出した。鞄にはクリスマスプレゼントの靴下を忍ばせて。  あの後、啓吾は絆創膏を貸してくれ、随分と助かった。プレゼントなんて久しぶりだ。望海がカフェに着くと、先に啓吾は待っていて手を振った。 「啓吾くん、クリスマスに少し早いけど、仕事で使ってもらえるかな」  靴下をもらった啓吾が、大げさなまでに喜んでいるのを見て、望海はなんだか申し訳ない気分になった。  成長するにつれて広がる二人の距離間は、どこか空虚で、親しく話をするのも、これが最後という気がしていた。  じきに大人になり、お互い違う人生を歩いていく。絆がほどけていく瞬間に、何か思い出を残せてよかった。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加