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 ふと見ると、ドアの横にある窓の格子に、数日前に使ったビニール傘が乾かしてあった。  武器になるものは持っておいたほうがいい。  物音を立てないようにビニール傘を手に取ると、ドクドクと脈打つ心臓を押さえながら、そっと玄関のドアを開けた。  玄関から続く部屋のドアは閉まっていて、何の物音も聞こえてこない。ドアの隙間から漏れる細い光が、俺の足元まで伸びていた。  玄関には、男物の大きな黒い革靴が一足と白地にピンクのラインの入った、明らかに子ども用と思われる小さなスニーカーが一足。どちらもつま先をこちらに向けて、綺麗に揃えてある。  靴を脱ぎ揃えて上がるとは、なんて律儀な空き巣だ。しかも、子連れ────?  空き巣の境遇を考えながら、静かにそっと靴を脱ぐ。  空き巣は丁寧に靴を揃えているけれど、危機的状況に面している俺は、そんなことまで構っていられない。  いつ向こうから襲い掛かられても大丈夫なようにビニール傘を右手で高く掲げると、玄関から延びる短い廊下の壁に背中をくっつけて横歩きしながら、部屋へとそーっと近付いた。何かあれば警察に電話できるように、左手にはスマホの準備も忘れない。
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