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「陽央、お前のその格好は何だ? 夜遅くに帰ってきて。ホストのバイトでもしてるのか?」 「は? ホスト?」  親父に思い切り眉をしかめられて、自分の服装を確かめる。  黒地に細い白のストライプが入った細身のスーツ。白のシャツに、若干の光沢があるシルバーのネクタイ。  これ、ホストっぽいか……? 周りからの評判は悪くなかったんだけどな。  俺は顔を上げると、親父に負けないくらいに眉をしかめた。 「そんなわけねーだろ。俺がやってんのは塾講師のバイト。保護者に会うこともあるから、服装はスーツ必須だし、中学生みてるから授業は夜なんだよ」 「文句あるか?」と。そんなふうに見上げると、親父は黙って頷いた。 「それより、こんな時間に何の用?」  俺は片手でネクタイを緩めると、腕時計に視線をやった。  時刻はもうすぐ23時を回る。  若いときはやたらと忙しそうで、日付をまたいでも会社から帰ってこなかった親父だが、ここ数年は遅くても9時には必ず帰宅している。  実家では母親が夕飯を用意して待っているはずだ。  それがこんな時間に、俺に一体何の用があると言うのだろう。きっと、ろくな用じゃないに決まってる。  そう思いながら、鞄の中に入れたはずの煙草とライターを探る。
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